Drop Piece



「何してんのー?」

「!」


利央の声が姿は見えないのに響き渡る。


「は?誰だよ!」

「ふふ、わかんないの?」


……利央?



「この声さっきの…っ」

「またお前かよ!いーよ!あんたも一緒に男の相手するっ?」

「それは無理かなぁ」


いくら周りを見渡しても利央、ましてやリコの姿はない。


「何、隠れてんのよ!出てきたらっ!!」


ヒステリックな先輩の声がキンキンと響いて、憎々しげな顔で辺りを落ち着きなく見回す。



「えー、でていーの?」

「はぁっ!?あんたふ…ざけ…」


屋上の入り口付近にあるタンクの上に人影が現れる。



「な…っ、あ…ぁ」



それは、さっきみたいに白いぶかぶかのセーターを着て短いスカートを履いた美少女リコなんかじゃなくて。



「出てきたら、って言ったのそっちだからねー?」


茶色いふわふわの髪を風に揺らしながら優しく、悪戯っぽく微笑む。




…いつもの利央だった。





< 167 / 340 >

この作品をシェア

pagetop