Drop Piece



いちるがドカッと壁を蹴りつける。


「消えろ、もうこいつの前に現れんな。次、何かしたら今度は俺が許さねぇ」


泣きじゃくりながら、屋上を出ていく先輩たちの背中をぼぅっ、と見つめてた。



「……みかん……立てる…?」


またしゃがみこんでしまったあたしを琉飛が立たせてくれた。


「な…んで?」


なんでわかったの。


「キングがねー…いきなし電話で“あいつの高校、行ってこいよ。は?別に理由なんかどうでもいいだろ。とにかく、行ってこいっつーの”とか言うからー」

「キ…ング?」

「おい、利央」


いちるが低い声で利央を睨み付ける。


え…?


「なんだよー?何照れてん……ぶはっぁ!!いてぇよ!!何す…っ。ごめん!ごめんなさい!!」

「晴、学校で超…迷ってたよね…」

「それカミングアウトしなくていいんですけどー!!」



コントを繰り広げる様子を横目にあたしはいちるを見続けた。


「んな、見んじゃねぇよ」

「いちる…」

「何もないわけねぇだろ、あんな顔してて」


ビシッ!

おでこに強い衝撃。


「嘘だってバレバレなんだよ、ばーか」



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