Drop Piece
「………っすみません!間に合いましたかっ?」
「大丈夫だよ、光ちゃん。ギリギリセーフ」
あいつが最近、撮影にギリギリで来るようになった。
前までは、一時間前に来て、セリフの確認とかしてたのに。
制服じゃねえから学校関連ではないんだろうけど。
来たとしても、自分の撮影以外、ずっと秋山さんと話してる。
「おい」
メイクの準備をしに楽屋へ戻ろうとする馬鹿を引き留めた。
「あっ、いちる、おはよー」
「………」
笑っていても明らかに滲む疲労感。
「なんか、あったのかよ」
「へ?」
目の下にうっすらと浮かんだ隈。少し、痩せた。
「……オンエアまであと3日だろ」
「そうだねっ」
楽しみー、と笑う馬鹿に再び違和感を覚える。
「電波ジャックとか、もつのかよ」
「頑張るよっ!朝早いのが不安なんだけどねー…」
声もちょっと嗄れてんじゃん。
「何してんだよ」
「……いちる」
「そんなボロボロになるまで何してんだよ、お前は」
黙り込む馬鹿を静かに見下ろした。