Drop Piece
進んでいくスクリーンの中の情景に口へ運ぶ手を止めた。
儚げな少女は確かにあいつが演じている筈なのに。
「今は笠置美音として生きてるんだね。光ちゃんは」
目を奪われ、耳を傾け、意識をそれにしか向けさせなくなる演技。
「……やるじゃん」
そんな軽口を叩けるほどの余裕などないが、見栄なのか、そう溢した。
「……どうして、あいつを推したんですか」
ただでさえ多忙なあいつに熱烈にラブコールを続けた秋山のおっさんに目を向ける。
「壱流くんにも、かなりこだわったよ?」と穏やかに笑われる。
「俺とあいつじゃなきゃ、このドラマは無しだ、とまで言ったらしいですね」
求められるのは、嬉しい。だけど、何でそこまでこだわったのか気になっていた。
「君たちの目は、演技するとき相手の顔と共に視聴者も見ているだろう」
意味が分からず、眉をしかめると秋山のおっさんは微笑んだ。
「レンズの向こう側にまで視線が届いているんだ」