Drop Piece
「その目が欲しくてね」と笑みを溢す秋山のおっさん。
柄にもなく、照れた自分を隠すように顔を逸らした。
でも、それは俺もあいつに対して抱いていたものだった。
あいつは、いっつも俺を見て、そしてその向こうまで見ている。
睫毛に縁取られた黒目がちな瞳を揺らされながら、見られると全てを奪われるぐらい無防備な気持ちになる。
緊張とは違う、気持ち。
あいつが動くたびに空気が揺れて、辺りが温かくなる。
さっきから、あいつのことばかり考えていたせいで頭にあの笑顔が浮かんできた。
それを振り払おうと頭を左右に振っていたら、秋山のおっさんに「そろそろエンドロールだよ」と言われた。
スクリーンに集中すると、聞こえてくるのは見知らぬピアノの音。
耳に全神経を集中させると、次にある女の歌声が響いてきた。
「………そうゆう、ことかよ」
ちらり、と横目で見ると笑ってるおっさん。
「いい、“挿入歌”ですね。………生撮りですか?」