Drop Piece
「ききききき緊張してきた!」
シークレットゲストって設定だから、何かカーテンみたいなのに四方を覆われるため、お客さんもスタッフのひとも共演者の人も見えない…けど!!
「歌詞、飛んだらどうしようー!」
「うわ、有り得ねえ」
だって、いちるは何回も何回も人前で歌ってきたかもだけど!あたしは中学校の合唱以来なの!
「もっと、応援してくれてもいいじゃんー、先生と生徒の仲でしょー」
「意味わかんね」
ふん、と違う方向にそっぽを向いてしまういちるに笑いかける。
「でもね、この前のいちるの特訓のお陰ですごい上手くなったって誉められたのっ」
「……そうかよ」
「ありがとうっ!あ、あとコーヒーも美味しかった!!」
あたしは、それを話しながらあることを思い出してバックの中を漁る。
「んーっと、あ、あった!!ほら、見て。いちるの置き手紙残してあるの」
「は?」
「やー、もう、いちるの俺様……じゃなくてアイドルパワーを吸収しようと思って!」
再び、いちるは顔を背けてあたしの方を見ない。
「あ、ねえねえっいちる!」
あと、もうひとつ聞きたいことがあったんだ。
「いちる、あたしが寝てる間に『光』って呼んでくれた?」