Drop Piece
「んぎゃ!!」
「お前、女優としてどうなんだよ、それ」
呆れた顔で溜め息を吐いて、ドアの前にいるあたしを押し退けノブに手をかける。
「ま、お前にしては上出来なんじゃん?」
ニヤリ、と笑ってドアを開けて出ていったいちる。
視線を投げられたものに向ける。
「…変なとこ…優しいんだから……」
投げつけられた甘いココアをギュッ、と抱き締めた。
「……?」
ペットボトルのラベルを見ると何かが書いてある。
クルクルと回して、文字の始まりを見つける。
「!」
シンプルだけど。
…一番安心する言葉。
たった四文字にこんなにもホッ、とする単純なあたしに苦笑する。
「ありがと、…“壱流”」
少しだけ熱い頬と、何でだろう…同じ名前なのに前とは違う呼び方に聞こえる彼の名前。
そして、あたしの安定剤は。
『おつかれ』
意地悪なくせに優しい彼から貰った四文字の言葉。