Drop Piece
ドア越しの体温+壱流+
ドラマも順調に進んで、あいつの曲はCD化も期待されて何事も全て調子が良かった。
あいつよりも、俺の方が知っていた筈なのに。
注目度が高まれば高まるほど、……あいつらも目を光らせてくる、と。
「おい、次お前なんだけど」
「あ、ありがとう!いち…っじゃなかった…」
何故か、こいつが俺の名前を呼ばなくなった。最初はそこまで違和感を感じなかったものの、ここまでくれば重症だ。
「なんで名前、呼ばねえんだよ」
「…っえ!!」
あからさまに視線を逸らしてくる馬鹿に苛立つ。
「おい」
「ちょ…撮影に行きた…」
「行かせねえ」
「いち…そっちだって名前、呼ばないじゃん!!」
「今は、お前に聞いてんの」
壁に押し付け、顔の両サイドに手を置いて逃げられなくする。
「…っだから!!」
「なんだよ」
「ーっ!今までと何か呼び方が違くなっちゃって恥ずかしかったの!壱流のバカ!」
名前を呼ばれ、不意をつかれ、その隙にあいつは楽屋を出て行った。