Drop Piece
『なんも…よくない』
「光」
『だって…っだって壱流は、あたしが今なにを考えてるか、だなんてわからないでしょ…っ!!』
震える声でドアに寄りかかったのか、ドアが揺れる。
俺は、光を感じ取るかのようにドアに手を当てた。
「わかんねえよ」
『…っじゃあ!!』
「わかんねえから下手な慰めとかはできねえけど、受け止めることはできる」
『!』
優しい言葉なんてかけることは出来ないけど。
「傍にいて、聞いてあげることは出来る」
一人で泣かせることなんか、させないから。
『…っやだ!』
「なんで」
『強くないじゃんっ!弱いとこなんて見せたく…ないよ…っ』
「…なんで」
『強い壱流には分かんないよ…っ』
「弱い…弱い奴の何がいけねえんだよ!!」
俺はドアノブに手をかけ、勢いよく俺と光の間にあった壁を取り払った。
光は驚いて、目を見開き携帯を落とした。
俺もそれと同時に自分の携帯を投げ捨て、光を抱き締めた。
「弱くたって…いいんだよ、強くなくていいんだ。だから…」
腕の中で震える体を一層強く抱き締める。
「一人で…泣くな」