Drop Piece
そんな、顔で笑うから。
そんな、はにかむように、幸せそうに笑う、から。
「え、なんでこっち向いてくれないの!?」
直視なんてできなくて、無言で苦し紛れにキッチンへと向かった。
「え、壱流、和食がよかった…?」
「…べ、つに」
「お味噌汁なら一応作ったよ!でも、色々作ってたら洋食方向だったからスープ作ってお味噌汁はお昼に保留しようと思ったんだけど…飲む?」
朝、隣にいただけで、そんなに笑うなら。
おはよう、を言うだけでそんなに幸せなら。
俺、は…。
「ひか…」
「あー!!朝のニュースの占い始まってるー!!」
まじで、お前そんな早く動けたのかってぐらい高速移動してテレビの前に体育座りしてる姿を見て、表情が弛む。
「…ま、…いいか」
変な感情に左右されんのも癪だしな。
沸いたコーヒーをカップに入れ一口飲んでいたら、向こうから光の声が飛んできた。
「壱流ー!!」
「…んだよ」
さらに、もう一口。
「今日、“い”の付く名前の人はコーヒー飲んじゃダメだってー!もし飲んだら大魔人が降り立つだろうってー!!」
無言でコーヒーのカップを流しに置いたのは言うまでもない。