Drop Piece



「琉飛くん?あと一分なんだ…」

「そっか。母さん、みかんがあと一分だって言うから切るね」



みかん…って何だろう…、しかもあたし全然喋ってない…。


『切るね…って私全然光ちゃんと喋ってないわよ!』

「どんまい。じゃあね」


最後に代わってもらおうと思って伸ばした手の行き場がない。



『光ちゃーん!今度サインちょうだいねー!』という声が届いた時にはもはや切れちゃってた。



スタッフの人が残り三十秒という紙を見せてきた。


「あ、えと、高崎光と!」

「……あぁ。仙堂琉飛の」

「「レッツ・トークでした」」



言いおわった途端には、とした。


「た…タイトルコール間違えた」

「これでいいじゃん」

「てか、何十回やってるのに、タイトル決まってないって…」

「ゆるゆるトークだね」


琉飛くんにゆるゆるって言われたくない!


あたしがじとーっと睨むと琉飛くんもあたしを見つめ返す。


さ……さすがアイドル、綺麗な顔だなー…。


「ねぇ」

「はははははははいっ?」

「俺、琉飛でいいよ」


そして、急接近。

顔、近い近い近いっ!


「だって俺とみかんの仲でしょ」


どんな仲なんでしょう…?と聞きたくても聞けない距離であたしは硬直。


「呼んでみてよ」

「りゅ…ーひ」

「なに?みかん」


そう言って笑う琉飛があまりにも柔らかくて緊張度が上がった。



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