Drop Piece
少女Hの憂欝+光+
朝から映画雑誌のインタビュー。ライターさんと喋れるからインタビューは好きなんだけど…。
「無理っ!あたし苦手なんですってば!!」
今回、雑誌の表紙になってしまったらしく…。
「光ちゃんならいけるよー!!」
…写真を撮られます。
あたし、この仕事だけはダメなんですってば!という叫びも虚しくカメラの前に立たされる。
カメラっていう無機質なものと向かい合うってのがどうしようもなく不安になってしまう。カメラマンさえもその空間から消えて、あたしとカメラ二人だけ。
「………」
あたしが俯いてる間にスタッフさん達は準備。
そのスタッフさん達に応える仕事をしたいのに。
「光」
呼び掛けられた方を見る。
「松井さん……」
「貴方は今、高崎光としてその場にいるの?」
「え?」
「変身しなきゃね、今その場にいる為の人に」
優しく笑う松井さんを見て、力がぬけた。
演技なら……できる。
目を瞑って落ち着いて、三回、深呼吸。
…今のあたしはあたしじゃない。
今のあたしは……。
─パシャッ
フラッシュがあたしを照らした。
「……一瞬で…」
この映画の強く、逞しく生きた、ヒロインなんだ。