青瓶奇譚
ぼくは少女に聞いた
「寒くない?」
「寒いわ」
「じゃあ降りてくれば?」
「いいの」
少女が
オカリナを口に近づけたので
ぼくはあわてて
また声をかけた
「すてきなオカリナだね」
「マアイよ」
「オカリナの名前?」
「そう」
少女がまた
オカリナを口に近づける
しかし
何も吹かないまま
しばらく止まっていた
少女は
オカリナを口から離して
「私のお話
聞いてくれる?」
と言った
ぼくは黙ってうなずいた