青瓶奇譚
ぼくは
かすみの肩をだいて
音を立てずに泣くかすみを
両腕で包んだ
ビルの谷間から西の空が見えて
空の端はまだ赤い光が残っている
かすみの肩はとても細くて
ベンチで座って抱き合っているぼくたちの体は
それほど密着はしていなかったけれども
かすみの心臓の音と
ぼくの心臓の音が
寄り添うようなリズムを奏でているようだった
ぼくはなぜか
あのオカリナの少女を思い出していた
愛するイルカと
誰もいない海の底へ行った
あのオカリナの少女が
少しうらやましくて
ぼくは人口の光を反射する川の水面を
見たけど
この川では
あまりにも浅すぎると思った