別れ道
「さようなら」
これ程までに重たく深い一言はなかった。
今、目の前には眠ったままの姿がある。
声をかけても、目を開けない。
最後に会った日の夜、彼女は事故に遇いもう一月目を覚まさない。
あの時呼び止めなければ…
悔やんで泣いて自分を責めた。いつの間にか涙も出なくなっていた。
今は1日10分だけが二人の時間でいられる…
ただ手を握り、1日の話をしている。光が眠る顔を微笑ませたように見せる。
その顔に口づけし別れを告げた―
「さようなら」