僕は先生を愛してます
僕は先生の震えが止まるまで、ずっと抱きしめていた。
陽も暮れオレンジの空から暗闇の世界に変わる。
「・・ありがとう」
先生はゆっくり体を離しながら言った。
「大丈夫?先生、怪我ない?」
「うん・・。私はもう大丈夫だから・・。あなたはもう遅いから帰りなさい・・」
先生は破れたブラウスを必死に隠し胸を押さえている。
僕は自分の着ている制服を脱ぎ、先生にかけた。
「俺、体操服があるから。先生はそれ着て帰って」
「・・ありがとっ」
また先生の瞳から涙が零れた。
「先生、泣かないで」
僕は指で先生の涙を拭った。
その指を先生が、ぎゅっと握った。
その表情と震えた手が、僕の我慢していた感情を覚ました。
「よかった・・。」
僕は先生を引き寄せ精一杯の力で抱きしめた。
「先生が無事で・・。本当によかった。俺・・また・・大切な人を失ったのかと思った・・」
言葉にならない。
僕の瞳からは涙が静かに流れた。
「幸村君・・」
「よかった・・」
胸が苦しくなる。
あの“事件”が、感情となって蘇る。
きっと“和泉”が怒ってる。
そんな気がした。