僕は先生を愛してます
「泣かないで・・」
言葉が逆になる。
今は先生の方が精神的にも肉体的にも、つらいはずなのに。
「俺の元カノ・・レイプされて・・自殺したんだ」
―重たい過去。
―重たい言葉。
翔太と僕以外知らない過去。
先生は黙って僕を見た。
「俺が帰りに送ってたら・・和泉は傷つかずに済んだんだ。だけど・・俺は・・。和泉は俺にも言えずに、レイプされた帰りに・・橋から飛び降りて・・」
和泉の気持ちが舞い降りてきているのか、あの時の哀しい思いが僕の胸をいっぱいにした。
「それから・・本気で人を好きになることが恐かった・・」
交じり合う瞳。
「あれから俺は和泉にとり付かれたみたいだった。ただ和泉を守れなかった自分に苛立ちばっかり覚えて・・荒れて・・好きでもない女を抱いて・・。情けないよな・・」
「それだけ心のそこから愛してたって事じゃない」
「先生・・俺を変えたのは先生だよ。もう過去は見ない。俺は今を生きる・・」
先生は穏やかな表情で微笑んだ。
僕は先生を見つめ、手で頬に触れた。
「今感じる、この気持ちは本物だ。偽りなんかない。ただあなたの事を・・心の底から愛しく感じる」
気持ちがスッと楽になった。
和泉が僕の心から離れていったような気がした。
「愛してる」