僕は先生を愛してます


「誰かいるのか?」


運が悪い事に警備員が巡回にきた。

僕は本棚の影に隠れた。

ライトの光が妙に明るく感じる。


「すみません。今から帰ります」


先生が声をあげる。


「遅くまでお疲れ様です。戸締まりお願いしてもよろしいですかね?」



「わかりました」


警備員は、くるっと先生背中を向けるとまた巡回の続きを始めた。


「先生・・?」


小声で先生を呼ぶ。



「先生?」



「・・もう、遅いから帰りましょ」



先生は“教師”に戻っていた。



「逃げるんだ・・」




「えっ・・?」



「先生は俺の事・・好きなんだろ?」



「帰るわよっ」



先生は鞄を持ち、振り返らずに言った。



「さっきのあれはなんだったんだよ?!」


震える唇。


「助けてくれた事は・・お礼を言うわ。ありがとう。でも、私たちは教師と生徒よ?それ以上の関係が生まれるわけないじゃない・・」



背中越しに聞く言葉。



「・・。そっか・・。俺は先生も俺と同じ気持ちだと思ってた・・。ううん。今のあの時間は、同じ気持ちでいたって・・信じたかったよ」



僕は先生の横を通り過ぎ教室から飛び出した。




今頃、笑っているはずの笑みは零れる事はなかった。
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