僕は先生を愛してます

隣街で降りようとしたが止めて、もう一街で降りることにした。


きっと、あいつ・・秋月が追ってくるから・・。


そして、父だって―・・。




「今日はホテルでも泊まろうか?」


静かな街に足を踏み入れ先生と肩を並べて歩く。

街といっても、人は少なく自然に囲まれていた。


「お金なら心配しないで。俺カード持ってるから」



「うん」




そして、少し歩くと小さなホテルを見つけた。



ホテルに入り名前を記入する。


幸村 聖夜


と書く。


先生にボールペンを渡すと、僕は小さく先生の耳元で囁いた。



「“恭子”だけ書いて」


用紙に指差す僕。



先生は笑った。




幸村 聖夜
〃 恭子


と並んだ文字。




「夫婦なんですね」




ホテルの方が驚いた表情で言った。



「はい」


と笑みを浮かばせ返事をした。





「あの~お客様」



隣のホテルの方が僕に話しかける。




「はい?」




「このカードなんですけど・・使えないみたいです」



そう言われカードを返された。



「まじで・・・?」



―やられた。


 父だ。



 父が止めたのだ。
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