僕は先生を愛してます
「はぁ」
愕然とし溜め息が漏れる。
現金といっても、5千円しか入っていなかった。
「私が出すわ」
先生はポケットから財布を出しホテルの代金を払ってくれた。
―情けない。
僕は鍵を受け取りエレベーターに乗った。
「ごめん」
「あなた、さっきから謝ってばかりよ?」
クスッと笑う。
先生は大人だ。
こんな状況でも不安な顔を見せない。
本当は不安なはずなのに・・。
「ここね」
鍵を開け部屋に入った。
小さいながらもキレイなホテルだった。
「幸村君、こっちに来て」
ドアの前に立つ僕を先生が呼ぶ。
「景色がとてもキレイよ」
先生は窓ガラスに手を置き、外を眺めている。
「本当だ」
心が癒された。
まるで今この世界に2人しかいないのではないかと感じてしまうほど、僕は穏やかな気持ちになっていた。