お嬢様の執事様
「ゆうき様ですか…なんとお書きになられるのですか?」

「あ…優しい姫って書いて、優姫です…」

「優しい姫ですか。お嬢様にぴったりなお名前ですね」

巽が、にっこりと優しい笑みを浮かべて、彼女を褒めた。

だが、彼女は綺麗な顔をピクリとも変えずに「はぁ…」と気の抜けたような返事を返しただけだった。

「申し遅れました。私は野々村と申します。気軽に、野々村とお呼びくださいませ」

巽がお嬢様に頭を下げる。
俺も続いて頭を下げた。

「私は垣元と申します。なんなりとお申し付けくださいませ」

それにも彼女は、ただただぼんやりとした光のない瞳で気の抜けた返事をしただけだった。

俺はその瞳を見つめて、瞳の中に闇をたずさえる彼女を見て、昔の自分と重ねてしまった。

彼女の中に、昔の自分を見てしまった。

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