副番長
「ね、ねぇ恵…。お父さん…帰って来ないんじゃなかったの?」
マキが震えた声で言った。
まだ、小学生だもの。
弱くて当然。
あたしは玄関に向かった。
何を言われても、怯まない。
「何?」
声が少し、震えてたかもしれない。
親父は怒りに震えていた。
「お父さんが何で怒ってるか分かるか?恵には、ちゃんとした人になってもらいたいんだ。」
何それ。
ホントはわかってるよ。
嫌なんでしょ。
会社で自分のこと子供のせいで嫌に思われるから。
あたしなんて、どうでもいいんでしょ?
あたし、ひねくれてるもんね。
小さい頃の、純粋な心なんて、持ってないよ。
どこかに落としてきちゃったみたい。
前の自分、どこにもいないから。