神様からのギフト
日常
もうすぐ、あの時間がやってくる。
そわそわと怪しい動きをしながら、私はその時を今か今かと待つ。
時刻は午後12時半ちょっと前。
机に向かいながら黒板に書かれていく暗号……、じゃなくて数学の公式に目もくれず私は時計の秒針の動きを凝視していた。
そして
キーンコーンカーンコーン
鳴った!
がたんっ、と音をたてて椅子から立ち上がった私を、数学教師が睨みつけた。
「おい、楠(クスノキ)。何やってんだ」
「え、だってチャイム鳴ったじゃないですか」
「だってじゃねー。まだ俺様の授業が終わってねえだろうが」
……これほどまでに口の悪い教師が他にいるだろうか。
心の中で悪態をついてみる。
「とにかく座れ。この問題解くまで授業するからな」
「んな! だってもうお昼ですよ!? 購買のパンなくなっちゃうじゃないですかっ」
「んなこと知るか」
しれっとした顔で毒を吐く彼は、佐倉叶哉(サクラキョウヤ)28歳。
真っ直ぐに伸びた色素の薄い茶色の髪に、薄い眼鏡のフレームから覗く切れ長の瞳。
怖いくらい整った顔の彼はこの学校の誰もが知るドS教師だったりする。