神様からのギフト
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「いい? 絶対にこの家から出ちゃ駄目だからね!」
ドアの把手に手をかけながら、私は、私を見送りに玄関まで来たであろうリトに釘を差すようにそう言った。
対するリトは未だ眠たそうに服の袖で目を擦りながら、「んー……」と何ともやる気のない返事を返す。
どうしよう、不安だ。
ご近所さんに彼を見られたら変な噂が立つに違いない。
ましてや、お喋りを日常の楽しみにしている奥様方に見られでもしたら……!
『ちょっと、聞きました? お隣の詩歌ちゃん、お兄さんが留守だからって家に男連れ込んでるんですって!』
『まあ! 最近の若い娘は……。早熟ねえ』
『それにどうやら一緒に暮らしてるみたいよ!』
『同棲!? あらあら……』
『しかもそれが中々のイケメンで……』
「――だぁああ!! だ、駄目、絶対駄目!」
「シイカ、声大きい……」
「ばれたら……!」
絶対話のネタにされる。
脳内で膨らました想像は、私の日常を壊すには充分の破壊力を持っていた。
いや、既に半分崩壊しているけど。
ちらりとリトを見て、深くため息をついた。