冬物語


「…ごめん。」


レイはもうそれしか言わなかった。





「でもなんでお前声出ないんだよ?」


聞かれるとは思った。
けど、レイにそれを教えるつもりはない。


レイが羽田さんに告白されてるのを見て声が出なくなったなんて、そんな弱いこと言えない。




「…」


「俺に言えないのか?」


「…」


レイ……なんでそんなに悲しい声を出しているの?


「なあ綺魅……俺ら前みたいに戻れねーかな」



レイはぽつりと呟くように言った。





「!」



「また…“戻るって何?”って言うのか?」




レイ…なんで覚えてるの?




「もう証明する必要なんかねーよ?」




なんで泣きそうなの…っ




「だから…なあ……綺魅。





   泣きやめよ……」





泣いていたのは

あたしだった―――……
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