冬物語
チラっと後ろを見てみると、
「(あ。)」
さっきぶつかった人だ。
「ん?あ、さっきの子やん。」
チラっと見たつもりが、目があってしまった。
「ってかキミ小さいなあ。」
……。
あたしは目を逸らして、その場を離れるため動き出した。
が、人があまりにも多くて、人の波にのまれてしまった。
「…っ」
いったい!誰かあたしの足踏んだ!
こういうとき身長が低いと困る。
気付いてもらえないから。
だから小さいと言われるのは嫌だ。
「…あ、見っけ♪」
え…
と思ったらすぐ手を掴まれた。
そして引っ張られる。
え、え、え、
逆にパニックになる。
いつのまにか渡り廊下まで来ていて、人はもうほとんどいなかった。
「…平気?むっちゃ埋まっとったけど。笑」
いやいや…笑うとこじゃないんですけど…っていうか手、離してくれないのかな…。
「キミ何組やった?」
「…。」
頷いて済む質問じゃないから困る。
「あれ?見れんかったん?」
「…」
どうしよう。
俯くしかできない。
「お前何してんの?」
あたしの後ろからまた声が聞こえる。
「あ、ソウ。」
この人ソウって言うんだ。
「ってか何手掴んでんの?困ってんじゃん。」
「あ、すまん。」
すまんて…。
「さっきの子やん。何組なん?」
「…。」
話しを逸らせたと思ったのにこの人も聞いてきた。
どうしよう。