冬物語
話しかけてもらえたことが嬉しくて、あたしは顔が緩んだ。
「ひゃー。えっらい可愛らしいなあ。なあ、全然知らん子ばっかしやで不安やろ?」
唯子と名乗ったこの子にあたしは素直に頷いた。
「じゃあさじゃあさ!うちと友達になろよ!」
「!」
友達なんて久しぶりに耳にする。
そう言ってもらえたことが嬉しくて、あたしは大きく頷いた。
「やった!名前、なんて言うん?」
そう聞かれて、あたしは机に置いた鞄の中からノートとペンを出すために鞄をごそごそすると、周りにいた子たちはみんな「何々?」と興味津々で目を向けてきた。
ノートを鞄から出そうとしたら、ガラっとまた教室のドアが開けられた。
あたしがそっちへ視線を持っていくと、あたしの鞄を見ていた人全員がドアへ目を向けた。
「おはーす!」
「やからお前うっせ。」
あ。
教室へ入ってきたのは朝会ったあの二人だった。
「あ、ソウとハルや!おはー!」
唯子という子が手を大きく振って、存在を主張している。
ソウって人はぶつかってきた人が呼んでた名前だから…ぶつかった人がハルか…
「やっぱし一緒のクラスやあ!」
みんななんだか嬉しそう。
「遅かったなー。」
近付いてくる二人に唯子が言うと、
「あー人捜しとって……て
あーーー!」
いきなり走り出し、みんな驚いた顔をしている。
気付いたらあたしの目の前に立って、あたしを指差している。
「お前いきなり消えんなよなーマジ捜したし!」
えっとー…
なんかごめんなさい。
「ハルこの子と知り合いなん?」
「朝会ったんや。」
「へーそうやったんか。」
「こいつが朝から走るでこの子にぶつかったんや。」
ソウが後からこちらへ歩いてきて言った。