冬物語


「前なんて忘れたし。」

忘れた。

…忘れたい。

忘れたくない…。

レイの笑った顔
一緒にいたこと……

全部、レイが好きだから。


「そうそう。俺らはさ、最初っから何もない!ってのを証明しただけじゃん?」


なんで笑いながら言ってるのか謎だ。

その言葉があたしを傷つけているのに。

そんなにあたしのことを見ていないということなのだろうか……


「じゃあさ…、わかったから前みたいに戻ってくれよ。」

「そうそう!何もないのはわかったから!!」

「なんか慣れねえしさっ」

「お前らが一緒にいないと俺らが落ち着かねえしよ。笑」


なんだそれ……
じゃあ最初っからあんなこと言わないでよ。
あんなこと言わなければ今頃レイと笑ってるはずなのに……

一緒に歩いて
笑って……


「なんだ、それ。
まあでもそうだな♪
前みたいに戻って、」

レイがそう笑って言うもんだからムカついた。



「戻るって何?」
< 29 / 186 >

この作品をシェア

pagetop