冬物語


びっくりしすぎて口があんぐりしてると思う。




お父さんは.
あたしの声が出なくなった次の日、急いで家に帰ってきた。


そのとき、お父さんもお母さんみたいに涙を流して、「ごめんな、ごめんな」と何度も言っていた。



誰も何も悪くないのに
あたしが悪いのに、みんなを謝らせていながら何も言わない自分は、残酷だろうか。





「もう少しで卒業でしょ?もう一回くらい.制服姿見ておきたいみたいよ。」

そう言ってお母さんはフフッと笑った。



「父さんが帰ってくるときいっつも俺変な時期だし。」



2つ上の兄.空(そら)


「しょうがないじゃない。」

笑いながらお母さんが言う。




お父さんは、優しい人だ。


いつも豪快に笑って、空気を暖かくする。


帰ってきたときはだいたいいつも1週間くらいでまた仕事に戻ってしまう。



その短い時間の中、お父さんの優しさを見つけるのは、簡単なことだった。
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