冬物語
小さいころ、お父さんはあたしによく言った。
「優しい子だな」
と。
決してあたしは優しくはないのに。
お父さんの涙の意味を知っている。
あたしはそれを拭ってあげられない。
お父さんやお母さんの涙を見たくないと思っているのに、
あたしは声を出そうとしない。
なんでと言われても、わからない。
声が出ないことに、不便だと思ったことがないからかもしれない。
友達がいない今、それを必要とは思わなくなってしまったのかもしれない。