【短編】きみのたからものを
たからもの
ゆうたくんは、ひとりっこ。
ゆうたくんが赤ちゃんのころにお父さんが亡くなって、お母さんと暮らしている。
お母さんは一日中仕事で、遊び相手のいないゆうたくんは、こうして毎日この土手で遊んでいるという。
きっと寂しいことだろう。
すると、更にこういった。
「ぼくね、きのうお医者さん行ったの。
おなか、さっきみたいに痛くなるんだ。
そしたら、こんどの日曜日からお医者さんの所に入院するんだって言われた。」
びっくりした。
では、さっきの腹痛も、単なる腹痛ではなかったのだ。
「おねえちゃん。病院にお友達、いるかなあ。」
もう日の暮れかけた赤い光を眺めながら、ゆうたくんは言った。
わたしは
「うん、いる。ぜったい。」
としか言えなかった。