【短編】きみのたからものを

それから次の日、夕方にそこを通ると、ゆうたくんがいた。

私を見つけると、おいでおいでの手招きをする。



ゆうたくんの所に行くと、ゆうたくんが何かビンを差し出した。

嬉しそうに言う。

「やっぱり来た。おねえちゃん。これ、あげる。」

見ると、メダカが中で泳いでいる。


わたしが不思議そうな目で眺めていると、ゆうたくんはこう言った。

「ぼく明日から入院でしょ。お家で飼ってるメダカ、連れて行くんだ。


でも、いっぱいすぎて、全部連れて行ってやれないから、おねえちゃんにあげようと思って。」

「これ、ぼくのたからもの。

おねえちゃんにあげる。」

そう言って差し出してくれた。私はただ、ありがとうと言って受け取った。
< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop