【短編】きみのたからものを
それから次の日、夕方にそこを通ると、ゆうたくんがいた。
私を見つけると、おいでおいでの手招きをする。
ゆうたくんの所に行くと、ゆうたくんが何かビンを差し出した。
嬉しそうに言う。
「やっぱり来た。おねえちゃん。これ、あげる。」
見ると、メダカが中で泳いでいる。
わたしが不思議そうな目で眺めていると、ゆうたくんはこう言った。
「ぼく明日から入院でしょ。お家で飼ってるメダカ、連れて行くんだ。
でも、いっぱいすぎて、全部連れて行ってやれないから、おねえちゃんにあげようと思って。」
「これ、ぼくのたからもの。
おねえちゃんにあげる。」
そう言って差し出してくれた。私はただ、ありがとうと言って受け取った。