【短編】きみのたからものを
別れ
それから半年経つが、土手にゆうたくんの姿はない。
病院も知らないから、会いに行けずにいた。
メダカは10匹くれていた。
ある日の朝起きると、尾ビレの切れた一番小さなメダカが死んで、水槽の底に沈んでいた。
なんだかとても寂しくなって、あの土手に行った。
わたしは土手に座ってゆうたくんを思っていた。
すると、一人の女性に声をかけられた。
「すいません、花巻 優太という子どもをご存知ですか。」
わたしは反射的に女性に向き直った。
優太?ゆうたくんだ!!
「はい。知っています。」
女性はホッとしたように笑った。
「やっぱり。では、あなたが優太の言う『おねえちゃん』なのですね。」