Hide-and-Seek&Tag
「ふはぁ…だりぃ」
あくびを噛み殺しながら登校した私は、靴箱に佇む人物に気がつくと、回れ右をした。
…が、一足遅かった。
「おはよう、アキちゃん」
その声と同時に腕をがっちり捕まれる。
「……おはようございます」
くそぅ、こいつに気づかれる前に気づきたかった………!!!!
そう思っても、後の祭り。若干引き攣りながら挨拶を返す。相手は私のその表情に、朝に相応しい笑顔を浮かべる。
周りの視線が痛い。この人は自分の立場や存在の大きさをわかっているのか、と睨みたくなる。
「ちょっと話があるんだけど、いいかな」
「へ?」
「込み入った話だし、生徒会室行こうか」
「は?…って、ちょっとっ」
その人は浮かべた笑顔をよりいっそう深くすると、半ば強引に私をつれて校舎の中へと入って行く。
ああ、周りの視線がさらに痛い。好奇と羨望と嫉妬とが入り交じったそれに、ある予感が禁じ得ない。
私、桜井 朗―サクライ アキラ―は、静かな高校生活を望めないと悟った。