恋文


【あの日…昌春が、あんな笑顔で笑うから、あの時きっとあたしは昌春に恋に落ちたんだと思うの。きっとこんなこと照れくさくて、手紙でしか言えないけどね──…】


──…さわさわと桜から

若葉がチラつく季節、




風からは土の匂いが香り始めていた─…






『昌春っ!国総bのノートまだぁ?』


香は、ノートの束を持ってバンバンと机を叩いた。




『まだ、ゎりぃ。あともう少しだけ待ってくれ』


昌春は、一生懸命ノートをまとめている。



『ったく、しょうがないなぁっ……でもさ〜…愛奈、先帰っちゃったし。みんないないし、夕暮れなんだよねぇ………』



『──…何か?』


その言葉に反応した昌春は、ピタリとノートをまとめる手をとめた。





『そ〜いやーさぁ。昌春、お腹……すかない?』



『………別に』





『………へぇ』







ぐ────っ……




しーんとしていた教室に、



香のお腹の音が響き渡った。







『あ……っ』


香は、段々と真っ赤になっていった。
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