コガネ《短》
「…先生。…せんせーい、起きてください」
なるべく、乱暴な口調にならないように気をつけながら、眠りの世界にいる先生を呼ぶ。
少しの間を置き、「うう…」と小さな呻き声をあげて、先生が静かに目を開いた。
まだ夢の中なのか、時々瞬きをしながら、何もない一点をただぼんやりと見ている。
その姿に、口元が緩む。
まったく、いつもいつも。
「先生、本借りたいんだけど」
わざと呆れたような声を出して、ぼんやりしている先生の目の前に黄金色の表紙を突きつける。
俺の声にビクリと反応した先生は、俺と本を交互に見ると、慌てて目の前に出されたものを受け取り、バーコードを取り、貸し出しを済ませた。
無言で出した俺の右手に本の角を載せ、申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい……ああ…居眠りしてしまうなんて司書失格だわ…」