僕を殺してください
3.シェゾ、アルムに破壊の力を与える
静寂に包まれた、神聖なる場所。
城下街、リニールはリューク王国で最も大きな街。
この教会に訪れる人もまた、多かった。
「神父様、私は罪を犯しました…。」
「ほぉ、どんな罪ですか?」
リニールの西側に住むネイラは、初めて教会を訪れた。
今まで真面目に生きてきた彼女にとって、懺悔は必要なかった。
だが今は、神にも縋りたい気持ちでいた。
「私は、母と2人で暮らしていて、生活費は私が働いて稼いでいました。」
礼拝堂の隅にある懺悔室。
中は小スペースで、中央は小さな窓のついた木製の壁で遮られている。
神父の顔は見えず、向こうも同じくこちらの顔は見えない。
「つい昨日のことです。給料日前の私にはお金がなく、前貸りを頼んでも許してもらえず…。途方に暮れていた時、無人のお店を見かけて…」
そこまで言って、ネイラは躊躇した。
続くであろう言葉を、神父が代わりに言う。
「その店からお金を盗んだ…。」
ネイラは咄嗟に、俯いていた顔を上げる。
「無意識だったのです!盗もうだなんて、ちっとも考えてなかったのに…。」
目に涙を浮かべ、必死で弁明するネイラだったが、神父の声は冷たく響いた。
「それでも盗んだ事は事実。貴方は罪人になった。」
途端、ネイラは泣き崩れた。
両手で顔を覆い、子供のように声を上げて泣く。
「神父様、どうしたらいいのでしょう…。
お店の人は私がやったなんてこれっぽちも思っていません。正直に言おうと何度も思ったけど、言い出せなくて…。」
神父はネイラからは見えることのない口を、三日月型に歪めた。