僕を殺してください


一瞬にして、神父はネイラの胸に手を刺し、同じように抜いた。
彼女の胸に傷がつくこともなく、神父の手には白く輝いた炎が握られている。

「実に綺麗な魂だ…。」

そう言って、ネイラの魂を口に含み、飲み下した。

「味もなかなか。」

満足げに笑う神父の顔は、すでに人のものではなくなっていた。
猫のような細い目、先の尖った耳、歪められた口。
着ている服以外、姿は悪魔へと変わっていった。

「さて、ネイラと言ったか。お前には代わりの魂をやろう。
そして、自分のネガイを思う存分叶えるがいい。」


怪しく笑いながら、神父姿の悪魔・キールは、自分の懐から黒い炎の魂を取り出し、ネイラの胸へと押し込んだ。
ネイラの瞳に光が宿り、何事もなかったように懺悔室を出ていった。
ただ、その表情は冷たく凍りついたまま。

こうしてリュークにある全24の街の教会にて、悪魔に呑まれた魂は増えていく。
キールに勝つ者、負ける者、どっちが多くても、確実にリュークは破滅へと近づいていた。




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