僕を殺してください
謁見の間へ着き、兵士に促されて玉座へ座る。
椅子の隣にはいつの間に来たのか、大臣が待ち構えていた。
短めの階段の下には、頭を垂れて跪いている青年が1人。
「陛下がいらした。面を上げよ。」
大臣がそう言い、青年は顔を上げた。
ただっ広い空間に1人だけ片膝をつき、王を見上げる。
「名を名乗り、用件を述べよ。」
王の目を真っ直ぐに見つめ、青年は口を開いた。
「僕はアルム・サレンです。国王にお願いがあって参りました。」
アルムと名乗った青年はどこか悲しげな表情で、それでも決意に満ちた瞳でいる。
「私にお願い…いや、願いとは?」
リク王はアルムの顔を見て、何か胸騒ぎを感じた。
嫌な予感ほど、よく当たる。
「いきなりで大変失礼且つ、申し訳なのですが…。
僕を殺してください。」
アルムは両膝をついて土下座した。
リク王と大臣、そしてそこに居合わせた兵士は皆驚愕した。
「な、何を申すか!」
大臣が驚いた顔のまま叫んだ。
リク王はその声ではっと我に返った。
「なぜそんな願いを?」
アルムの真意を探るように、リク王は真剣に問う。