僕を殺してください
「つい先日、僕のところへ黒衣を纏った男が来ました。そして僕に言いました。“お前に滅びの力を与えた。この世界の人間が己の欲に勝てなかったからだ”」
その言葉を聞き、リク王の心臓がドクンと脈打った。
黒衣を纏った男。
それはまさしく…。
「神様が…来たんだ。リュークは滅ぶのか…。」
今度はリク王の言葉に皆驚いた。
「陛下、どういうことです?リュークが滅ぶとは一体?」
大臣は混乱した頭を必死に回転させて訊ねた。
アルムはどこか納得した様子で続けた。
「その神様は、僕が生きている限りこの世界は破滅する。リク王に殺してもらえ…とも言いました。」
その場の空気が一瞬にして凍りついたのをアルムは感じた。
「神がそのようなことを言うはずが…!」
大臣は信じられないと、首を振って呟いた。
「残念だけど…事実なんだ。大臣。」
リク王自身、本当は信じたくなかった。
否、認めたくなかったのだ。
「十数年前から、王だけに継がれる言い伝えがあるんだ。リュークは神によって試されている。この世界が欲に負ければ破滅が訪れ、リュークは滅ぶ。ただし、チャンスが与えられるから、よく考えて決断しろと。」
リク王は俯き、しかしよく通る声で話した。
自分にも言い聞かせるように。
これが、神から与えられたチャンスなのだと。