僕を殺してください
「リリア…。僕も…」
好きだと言いたかった。
でも言ったら、気持ちが揺らぐかもしれない。
そう思うと、言葉にすることができなかった。
アルムは立ち上がり、リリアの側へ寄るとそっと抱きしめた。
「ごめんなさい、リリア。君の気持ちだけで僕は十分幸せです。だからもう泣かないで。笑ってください。」
そっと耳元で囁くと、リリアはくすぐったそうに身をよじる。
照れくさそうに離れて顔を見ると、リリアは赤い顔で眉を寄せていた。
「アルムのバカ。そんなこと言われたら、笑うしかないじゃない。私、許さないんだから。」
そう言って膨らむほっぺがかわいくて愛しくて、アルムはもう一度リリアを抱きしめた。
アルムの想いはリリアに伝わっていた。
抱きしめる体温と鼓動の速さで、言われなくても気付いてしまう。
それがなんだか恥ずかしくて、リリアはアルムの腕の中で目を閉じた。
この幸せがずっと続けばいい。
ただそれだけが、今の2人の願いだった。
「おじ様達にはどうするの?」
ひとまずお茶でも飲もうとアルムが言い、2人は並んでハーブティーを飲んだ。
「父さん達には…言わないつもりです。きっと止められるでしょうし、殴られるのも嫌ですから。」
ははは、と笑うアルムに、リリアはアルムが殴られるところを想像した。
あのおじ様ならやりかねない。
「執行は2日後か…。リク王様はお優しい方なんだね。」
アルムは城での事を全てリリアに話した。
リク王が自分の意志を汲んでくれたこと、少しでも時間を与えてくれたこと。
「ご自分だって国民殺さなきゃいけないなんて、絶対お辛いはずなのに。」
2人は黙ったまま、リク王に感謝した。
「アルム、リク王が与えてくれた2日間、楽しい思い出たくさん作ろうね。私、絶対ぜったいゼッタイ一生忘れないから!」
真剣な目で言うリリアが可笑しくて、アルムは笑いながら答えた。