僕を殺してください
そして2人は2日間、普通の恋人同士として過ごした。
朝早くから一緒にリンゴを摘み、それをリリアの家でジャムにする。
昼までアルムは働き、リンゴジャムを挟んだサンドイッチをリリアと食べた。
夕方まで丘を登ったり、森を散歩したり、隣街まで買い物に出かけたり。
それはもう、とてもとても幸せで、同時にとてもとても切なかった。
時間が経つにつれ、切なさが募り、夜の別れ際にリリアは泣き出した。
「ごめんねアルム…。私、最後まで笑顔でいようと思ってたのに…。」
泣きじゃくるリリアを強く抱きしめ、嬉しさと切なさでアルムも泣きそうになる。
「リリア、いいんです。僕のために流してくれるのでしょう?とても嬉しいですよ。」
アルムの体温が温か過ぎて、リリアは泣き止むことができなかった。
それぞれの家へと帰るころになってもリリアは泣き続け、アルムは心配しながらも帰宅した。
彼は最後の夜をどんな気持ちで過ごしただろう。
愛しい人への想いを馳せた?
自分が死ぬ瞬間を想像した?
本当は恐くて泣いていた?
リリアはただ眠ることに集中した。
何も考えないようにきつく目を瞑り、遠くで鳴くフクロウの声に耳を傾ける。
静かに流れる時間が忌々しくて、あまり眠れないまま夜明けを迎えてしまった。