僕を殺してください
どれくらい経っただろうか。
アルムは方膝を床に着き、頭を下げたまま待ち続けていた。
あまり長い時間1人にされると、いろんな考えが頭に浮かんでは消えていく。
もうすぐ死ぬのなら、あまり考え事はしたくない。
潔く死にたい。
待たされてから30分が経ち、ようやく段上に兵士とリク王、続いて大臣が現れた。
「陛下がいらした。面を上げなさい。」
言われて頭を上げるアルム。
視線は真っ直ぐにリク王の目に向ける。
着替えたリク王の服装は、白い襟がフリルのYシャツに薄茶のベスト、その上に赤い生地に縁や至る所に金と緑が織り交ざった糸の刺繍がされた上着。刺繍は絨毯と同じ柄。
リク王もまた、ただ真っ直ぐにアルムの目を見つめた。
そのまま重い沈黙が流れる。
「…陛下。」
沈黙に耐えられなくなった大臣が、リク王の耳元で囁いた。
その声にはっとしたリク王は、軽く咳払いしてから口を開く。
「え、えー、アルム、よく来たな。」
何言っちゃってんですか陛下。大臣は胸中でそう呟いた。
「は、はぁ。」
アルムは困ったように、とりあえず返事をした。
一気に場の空気が気まずくなるのを兵士は感じる。
大丈夫かなぁ、陛下。
「すまないアルム。いきなり本題に入るのも心苦しいのだが…。」
リク王は目を泳がせて、口の中でもごもごと言う。
兵士の心配をよそに、見事弱気になっている。
「お気遣いありがとうございます。覚悟はできてますので、気になさらないで下さい。」
いかにもアルムの方が気を遣っているような言葉に、リク王は情けなさと嬉しさで泣きそうになってしまった。
「そうか…すまない。いや、ありがとう。」
そう言ってリク王は大臣を椅子に座ったまま見上げ、軽く頷いて合図をする。
合図を受けた大臣は一歩前に踏み出し、左手に持っていた巻物を縦に開いて読み上げた。