僕を殺してください
「アルム・サレン、リュークを悪魔と破壊の力より救う為に、その命を差し出す貴殿の意思と決意をここに称える。そして貴殿の死を名誉として、国内放送によって国民全てに通達し、黙祷を捧げることをここに宣言する。」
アルムは少し驚いた後、嬉しさに心からの笑顔でリク王に向かって頭を深く下げた。
リク王はそれを見ると立ち上がり、階段を下りてアルムの前で膝をつき、アルムの腕を掴んで一緒に立ち上げる。
「アルム…行こうか。」
それだけ言うと、リク王はアルムについて来るように言って歩き出した。
その頃アルムの家では、いつまで経っても帰ってこないアルムを、両親は心配していた。
「ガゼル…その辺を探してきてもらえませんか?」
母のニコルがベッドの上で上半身を起こし、そのベッドの前に丸い椅子を置いて、父のガゼルが座っている。
「どうせいい天気だから、ウォールにでも行ってるんだろう。心配しなくてもそのうち帰ってくる。」
ニコルを元気付けるように笑顔でそう言ったが、ガゼル自身も心配していた。
胸騒ぎがする。ウォールに行くなら、出る前に告げてから行くのがいつものアルムだ。
何やってんだバカ息子。
母を心配させやがって。
帰ってきたら一発殴る。
そんなことを思っていた時、勢い良くドアが叩かれた。
ドンドンドン!!と、大きな音にびっくりした2人は数秒間動けなかった。
「一体誰だ…。」
落ち着かない心臓を自力でなだめながら、ガゼルはドアを開けた。
「おじ様!アルムは!?」
そこには息を切らせ、涙でぐしょぐしょの顔をしたリリアが立っていた。
「リリア…!どうした。アルムはリンゴ摘みに出たまま、まだ帰ってないぞ。」
それを聞いたりリアはその場に崩れるように座り込み、両手で顔を覆って泣き出した。
「行ってしまったのね…アルム…。お別れ、ヒック、言ってない、ヒック、のに…っ!」
しゃくりあげながら言うリリアの様子を見たガゼルは、胸騒ぎが気のせいでないことを確信した。
「とにかくあがって、どういうことか説明してくれ。」
ガゼルはそう言って優しくリリアを立ち上がらせ、家の中へと入れてやる。