僕を殺してください
リビングの椅子に座らせ、机にお茶を煎れて置いてやり、自分はリリアの前の席に座った。
リリアは出されたお茶をありがたく頂きながら、なんとは落ち着くことができた。
そして思い出しながら、ぽつりぽつりと言った。
もう過去になった、でもまだ身体に残ってるアルムの体温を感じて。
「3日前、アルムがお城に行ったのを覚えていますか?その時アルムは王様に…自分を殺してほしいと頼んだそうです。」
言って再び目頭が熱くなって、鼻の奥が痛んだが、リリアは涙を堪えた。
ガゼルは驚きに目を見張っている。
机の上で組んでいた手が、拳に変わった。
「どういうことだ?なぜアルムが王にそんなことを頼むんだ。」
努めて平静でいようと、ガゼルは深呼吸をしてから聞いた。
リリアは立ち上がり、“アルムの部屋へ行かせて下さい”と言ってそこへ向かった。
残されたガゼルはもう一度深呼吸をしてお茶を飲んだ。
寝室ではニコルが何も知らないで、不安がっているだろう。
しばらくして戻ってきたリリアの手には、一通の封筒が握られている。
表紙にはアルムの字で、“父と母へ”と書かれていた。
リリアはそれをガゼルに渡し、ガゼルは僅かに震える手で封を切って中身を広げた。
「私はおば様の所へ行ってます…。」
そう言ってリリアはニコルのもとへ向かった。
昨晩アルムに抱きしめられた時、耳元で言われたのだ。
“父と母に手紙を書いたから、渡して下さい”と。
再び1人になったガゼルは手紙を読み始めた。
-父さん、母さん、先立つ不孝を許してください。なんて、本当にこんな事を言う日が来るなんて、思ってもみませんでした…。-
「バカやろう…っ!」
ガゼルの目から涙が落ちた。