僕を殺してください
リュークが美しい光に包まれ、キールに呑まれた魂はキールの体内から解放され、もとの肉体へと戻っていく。
その間光はずっと降り続け、不思議がって外へ出てきた人々は何か暖かいものに包まれる感覚を確かに感じた。
リリアとガゼルも家から飛び出し、光を身体に浴びて理解する。

「アルムだわ…!」

目から大粒の涙を流して、リリアは光を抱きしめるように腕を身に寄せた。
寝室の窓を開けて外を見ていたニコルのもとにも、光が風に乗って運ばれる。

「まぁ…綺麗…。」

光はニコルの身体を包み、一瞬強く輝くとすぅっと消えた。
ニコルは驚いた。身体が軽くなっている。
動かすことさえままならなかった身体が、まるで羽根が生えたように軽く、思うように動かせる。
奇跡だ、とニコルは思った。
そしてそのまま愛する夫のもとへと数年ぶりに走った。

「ガゼル!!」


愛しい人よ、大好きな人達よ、この世界よ、幸せであれ。
この先、また同じことが起きたとしても、自分の死が無駄にならぬよう。
消えても尚、この世界を愛するから、どうかどうか…
永く、末永く。


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