僕を殺してください
1.アルムとリリア、平和な日常
穏やかな日差し、優しくそよぐ風。
いつもと変わらない朝が、今日も訪れる。
アルムは夜明け前に摘んだ新鮮なリンゴを、カゴいっぱいに詰めた。
自然と笑顔になりながら、それを持って家を出る。
行き先は隣の家。
「おはようございます。」
ノックの音と共に声をかける。
中から返事が聞こえ、そっとドアが開かれた。
「おはよう。アルム。」
出てきたのは幼馴染のリリア。
まだ少し眠たそうに目をこすっている。
「リンゴ、持ってきました。」
はい、と渡すアルムにぱぁっと顔を明るくし、リリアは満面の笑みになった。
「ありがとう!アルムの育てたリンゴ、本当においしいんだよね。」
嬉しそうに受け取る彼女を見て、自分も嬉しくなるアルム。
お互いの母親が友達で、生まれた時からずっと一緒にいた2人。
今年でもう21になるが、仲の良さは変わらない。
時々こうしてリンゴをあげて、それをジャムにして分けてくれる。
そんな日常が平凡だけどすごく幸せだと、アルムは感じていた。
「あ、朝食食べてく?母さんがちょうどパンを焼いたところなの。」
言いながらアルムの腕を引っ張り、有無を言わさず家の中へと入れた。
リリアは時々強引だ…。そんなことを思いながら苦笑しつつも素直に従う。