僕を殺してください


シェゾとメゾは全てをその目で見ていた。
リュークが破滅から逃れる様を。

「失敗か。」

シェゾは、残念そうでも悔しそうでもなく呟いた。
メゾは隣でくくくと笑いながら、嬉しそうな様子でリュークを見つめる。

「彼は選ばれるだろうか。」

「大丈夫だろ。あれだけ祈られてるんだ。アダムが選ばなかったら、エヴァが怒る。」

シェゾの言葉に安心しながら、メゾは確かにと笑った。
メゾの問いは願い出もあった。
世界の犠牲となった者、世界を犠牲とした者はアダムに選ばれ、自分達のように創造と破壊の神となる。
だがそれが本人にとって、幸せになるかどうかは分からない。

「あいつは幸せになるだろう。」

メゾの心を読んだかのように、シェゾが言った。
シェゾの顔を見上げたメゾは微笑み、再びリュークに視線を戻す。

「そうだな。」

メゾの言葉は息吹となり、リュークに冷たい風を吹かせた。


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