僕を殺してください


ミエルとはガゼルの親友で、家具職人仲間でもあった。
結婚してすぐに隣街に引っ越してから、音沙汰が無くなってしまった。
だが覚えているミエルの面影に似ている。
ガゼルの言葉にリク王だけでなく、その場にいた全員が驚いた。

「父を…知っているのですか?」

リク王は嬉しそうだが、どこか淋しそうに聞く。

「ミエルさんはガゼルの幼馴染なんですよ。」

「そう言われれば、面影がそっくりね。」

ガゼルの代わりにニコルが答え、リリアの母が同意した。
ガゼルはリク王を凝視している。
嬉しさからか、頬の高潮と胸の高鳴りを感じながら聞いた

「ミエルはどうしてる?元気なのか?」

ガゼルの問いにリク王は俯き、眉間に浅いしわを寄せた。
その様子を見た大臣はリク王の後ろへ進み、ガゼルに向き合って代弁する。

「ミエル様は陛下が5歳の時に、事故で亡くなられました…。3人のお子さんと奥様を残されて…。」

もう20数年も前のことだった。
友の死を、まさかこんな形で知ることになるとは…。
ガゼルの肩と頭が同時に下がった。
代わりに、リク王が顔を上げる。

「父は、親友に会いたがっていました。幼かった僕にはそれが誰かは教えてくれませんでしたが、あなただったのですね。」

ミエルもガゼルもお互いに仕事一筋な所があり、どちらからか会いに行こうと思うことはあまりなかった。
それゆえの結果なのか…、後悔が募っていく。

「陛下、まことに申し上げにくいのですが、お時間が迫っております…。」

大臣が腰を曲げて、リク王の耳元で囁いた。
リク王は残念そうに頷く。

「すみません。そろそろ行かなくては…。あの、良かったらまた来てください。父との話を、聞かせてもらえませんか?」

リク王が席を立ち、ガゼルに向かって右手をそっと差し出しながら言う。

「ああ…。ありがとうな。」

笑顔が戻ったガゼルは、リク王の手を握り、約束をする。
今度は後悔しないように、ちゃんと会いに来るよ。ミエル。
リク王も嬉しそうに微笑み、その場を去った。
ガゼル達はその後、城の中を見学させてもらってから帰宅した。


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