僕を殺してください


サレン家の机にはアルムの手紙が広げて置いてあった。
風に吹かれて乾いた涙の跡がいくつかあり、涙に濡れた部分は滲んで文字が歪んでいる。

-父さん、母さん、先立つ不孝を許してください。
なんて、本当にこんな事を言う日が来るとは、思ってもみませんでした。
…………
大好きなリュークや、父さん母さんの為なら僕は喜んで死にます。
…本当のことを言うと、少し恐いです。
母さんの側にいてあげられないことや、父さんの仕事を継げないことなど、考えると死にたくなくなります。
でももう決めたことだから、潔く逝きたいと思います。
…弱音言ったこと、リリアには内緒にしてくださいね。
弱虫だなんて、思われたくないですから…。
父さんの作る家具には劣るけど、僕の作った作品が倉庫にあります。
売り物にならなかったら、どこかに飾ってください。
頑張って作ったので。
母さん、病気が良くなるように空の上からでも祈るから、僕の分も長生きしてください。
それから…リリアに、僕の他に好きな人を見つけて幸せになってくださいと、伝えてください。
そうでなければ、僕が悲しいから…。
父さん、母さん、おばさん、リリア…みんな愛しています。
死んでからも、ずっとずっと。
どうか、幸せであってください。
僕は…幸せでした。今も、幸せです。
アルムより-

冷たい風が窓から入り込み、手紙を舞い上がらせる。
彼が作った棚の上で、写真の中のアルムが笑っていた。
いつまでも…。


END


< 35 / 38 >

この作品をシェア

pagetop